ただよう、甘いヒト【完】
「織ちゃんてすげーよなー」
「何が?」
「いっつも俺が酒飲んできたって知ってるじゃん」
ベッドに寝転んだ安城は、ご機嫌な様子でそばに立つ私を見上げた。
不覚にも可愛いな、とか思ってしまうから悔しい。
「バカ。あんたが酔った時しかここに来ないからじゃん。酒臭いしすぐ分かるよ」
「……それ、美里の口癖」
「は?」
「酒臭いしすぐ分かるよって。言い方までそっくり。織ちゃんもっと言ってー」
「は」
甘えたようにクスクス笑う安城に、どきりとした。
本人は酔っていて口を滑らせたつもりもないのだろうけど、それは完全に安城の失言だった。
今日はいつも以上に酔っているらしい。
「早く」
急かしてくる安城はあたしの髪に触れ、ベッドの中に引っ張り込もうとしてくるからその腕を咄嗟に払う。
キョトンとした表情の安城は、不思議そうにあたしを見た。