ただよう、甘いヒト【完】




「……安城」


「なーに織ちゃん」


「……こんな昼間から眠れないよ」




その背中に手を回してしまうあたしも大概甘い。


ぎゅっと安城をきつく抱きしめてあげれば、彼はふふふと満足そうに笑った。




「いいよ。その代わり俺が寝るまで抱きしめさせといてー」


「花盛りの乙女の休日を一日無駄にさせる気?」


「だって俺織ちゃんがいないと眠らんないし」




嘘つけ。じゃああんたこの2週間一睡もしてないのかよという意地悪な問いは声にならない。


酔っ払いに何を言っても結局無駄だ。




「おやすみ織ちゃん」




安城はあたしの腕の中で眠りに落ちる。その安心しきった幼稚園児みたいな寝顔が好きだ。




「……安城? ……寝た?」




数分後、安城の寝息が安定したのを確認して顔の前で手を振ったりしてみたけれど、起きる気配はない。


相変わらず寝付くのが早い。超高速。マジで子供みたいだな。


ふっと思わず笑って、安城の髪の毛をさらりと撫ぜた。




「安城、すき」




酒臭い匂いに混ざって香る、安城だけの優しい香りがあたしは好き。



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