偽りの御曹司とマイペースな恋を



「俺は大した事は出来ないけど、これでも目標は持ってるんだ」
「どんな?」
「爺さんみたいになりたい。落ち着いてて物知りで、料理が上手」
「イツロ君のお爺ちゃん。たしか、お店をしてたんだよね」
「ああ。爺さんの作るオムライスは世界一だ」
「美味しそう」
「毎日誰かしら人が居た。明るい、暖かい、いい匂いのする店」
「…お腹すいてきた」

思い出に耽っている瓜生を他所にオムライスを想像しおなかをさする歩。

「その為にも腕を磨いて金ためないとな」
「イツロ君の料理は美味しいよ。だから明日オムライス食べたい」
「そうしよう」

ギュッと瓜生の手を握って目を閉じる歩。

まだ寝るには早い時間。
彼が居なければ平気で本を読んだりテレビを見ているけれど。
全然眠くなかったはずなのに、不思議な事に眠くなってくる。

幼い頃を思いだす。

何時までも眠れなくてお母さんとお父さんの間に入り

一緒に寝てもらった時のことを。

「お休み」
「うん…」

私今凄く安心してるんだな。

歩はぼんやりとした意識の中で思った。
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