偽りの御曹司とマイペースな恋を
話には聞いてもまだ実際歩は行った事はないけれど、
彼の祖父のお店は人里離れた場所にあるそうで。
街から離れてもわざわざ来てくれる常連さんから
ハイキングに来た観光客や開放されている広い土地に
犬を遊ばせるために来る人で何時も活気があったらしい。
「…イツロ君と2人きり…か」
もしそこで2人暮らしとなれば。
想像してちょっとにやけてしまう歩。
「腹痛いのか?そんな変な顔して」
「どうせ変な顔です。
短いスカートのフリフリエプロンのメイド服にしてやる。もちろんイツロ君がね」
「俺なのか」
「きっと誰も来ないね」
「ああ。そんな気持ち悪い場所俺が客でも行かない」
「…私、頑張れば行ける。……かなあ」
おしゃれなカフェのドアを開けたら長身で怖い顔のメイド服男。
あ。だめだ。きっと全速力で逃げる。泣きながら叫びながら。
歩は今のナシで、と瓜生に言った。
「知り合いに頼んで一度イメージを3Dで再現してもらうか」
「そんな事出来るんだ」
「ああ」
「じゃ、じゃあ」
「お前が想像しているものを3D化する気はない」
「……イツロ君意地悪になった」
「趣味を否定する気はない。でもお前の部屋だけって言ったのに
最近はリビングや台所、風呂場にまであの変なものを置いてるのはどうしてなんだ」
「そうしたらイツロ君も一緒に好きになってくれるかもって。ほら。
毎日見てたら何か電波を受信しない?楽しいなって思えてこない?」
「そうだな。トイレ入ったらタコの化け物がこっち見てて気が狂いそうにはなる」
それも座っても立っても目の前に見えるようにわざわざ場所を合わせて張っている始末。
ポスターの下には彼女が書き加えたと思われるそれらのキャラの名前と設定。
読みたくなくてもつい目で追ってしまって2匹ほど名前と設定を覚えてしまった。
瓜生がお料理マニアなら歩はホラーマニア。
どっちもどっち。