偽りの御曹司とマイペースな恋を


それから1時間後。

「どうした。もう終わったのか食事」
『うん。先生も帰った所なんだけどね。おじさんが変態行動に出だしたから迎えに来てほしい』
「分かったすぐ行く。出来る限り全力で父さんから離れろ。いざとなったら悲鳴を上げて警察を呼べ」
『わかった』

何時でも迎えに行けるように支度していた瓜生は急いで車に乗り込む。
歩から聞いた店に直行。そこで走っている歩と合流しそのまま車に乗せた。
父がどうなったかどこにいるかなんて聞く気もない。どうせ変な事している。

「楽しかったか」
「うん。いっぱい話を聞けたよ」
「そうか。よかったな」
「サインもらっちゃった。でね。また話ましょうって。イツロ君にも会いたいなって」
「俺の事話したのか?」
「おじさんがずっと自慢してたよ。僕の可愛い後継者とかなんとか」
「……」
「で。私の事、その可愛い子の美しいフィアンセですーって言ってた。
先生苦笑いだった…せめて美しいと可愛いを逆にしてもらえればかろうじてごまかしが」
「何が後継者だまったく。あの人もいい加減だ」
「ははは」
「お前が楽しかったのならいい」
「うん。あ。ねね。ショールーム見ていかない?
お家のだけど、こう、ヒントがあるかも」
「いいのか?」
「イツロ君のイメージを膨らませなきゃ!」
「…お前の要望も聞いておきたいんだけどな」
「じゃあ、やっぱり行こう」
「…ああ」


どれだけ好きでも昔を知っていても。

お互いを完全に理解して同じくらいの目線になるのは難しい。

私は私であり、イツロ君じゃない。

当たり前だけど。

そこまで深く考えなくても互いに尊重できれば上手くいくものだ。
歩は意地を張るのをやめて瓜生には自然でいてもらおうと思う。
あれが嫌いだとしても強要さえしなければ共生はできるのだから。


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