偽りの御曹司とマイペースな恋を
「……」
出版社へ向かう途中、ふと目に入った本屋に入り普段なら近寄らない
ジャンルの本棚へ。目的の本を適当に1冊手に取りペラペラとめくって
中身を読んでみる。が、イマイチ面白みが分からなかった。
本を戻しさっさと店を出ようとしたがつい気になるレシピ本を1冊購入した。
「今は昼の休憩中か?電話大丈夫か」
車に乗り込み発進しようとして何かを思い出したように携帯を取る。
ちゃんと時間をきちんと確認してから。
『うん。大丈夫だよ。どうかした?』
相手は歩。
「今日はそっちに行って企画会議を開く予定だから、帰りが遅くなる」
『知ってるよ?だから私も頑張って企画を』
「お前は定時に上がるようにするから。先に帰って待っててくれるか」
『なんで?私だって新人だけど頑張るのに』
「遅くなる上に終わったら俺はそのまま会社へ戻る事になるから、お前を送れない」
『いいよ。バスとか歩きで帰るから』
「駄目だ」
『えー…じゃあタクシーで帰る』
「勿体無い」
『イツロ君。わかった。じゃあ、先輩に送ってもら』
「悪い。運転するから切る」
『えええ。待って待って!私だって』
「お前の話は部屋で聞けばいい。何も無理に残らなくていい、大丈夫だ」
『そんなぁ』
電話口の歩の不満そうな声を無視して電話を切り車に乗り込む。
今日はあちこちと移動するので弁当は作ってきていない。
だが歩にはしっかりと栄養を考えたお弁当をもたせている。
「……さて、何にするかな」
定番のうまい店は沢山知っているけれど、どうせなら新規のお店に行きたい。
自分で試行錯誤して真似したくなるような。メニューに増やしたくなるような。
食事のことで悩みだすと30分でも1時間でも悩んでしまう瓜生。
だが、時間は待ってはくれない。
結局何時ものお店に決めて車を走らせた。
予定の時間より若干遅れて歩の居る会社へ入る。
受付の女性に挨拶をされて軽く会釈をして編集部へと向かっていく。
流石にもう案内をしてもらわなくても一通りは場所がわかるようになった。
けど、一度遭難して歩にこっそりメールして助けてもらった事例あり。
「お疲れ様です」
ひと声かけて編集部へ入ると忙しそうに動き回っている人。
に紛れて先輩に仕事を教えてもらいながら雑用をしている歩。