偽りの御曹司とマイペースな恋を
「そうだ。ねね。触って」
「触ってる」
「もっと触って。最近サボり気味だから」
「いいよ、今日はいっぱい歩いて疲れたろ?」
「触るくらい疲れません。スキンシップ」
「…お前は何時も変な所触らせようとする」
今度は渋い顔をした。歩が触ってというか所は胸とかお尻とか。
手とか顔なら触れるけれどそんな性的な場所は困る。
2人がこれからもずっと一緒に居るために必要なのだというけれど。
瓜生にとって強く女性的なものは嫌悪感をどうしてもぬぐえなくて苦手。
「私の体、へん?おかしい?ちっさいから…やだ?」
「お前以外の体なんてどうでもいい。大事だから、…だから、怖い」
好きな女の子に触れたい。
けど触れたら汚らわしく感じる。
歩はあの女と違う。
一度幼い息子を捨てて、今度は金のために手元に戻し
また要らなくなるまで虐待を続けた母親とは。
頭で分かっても体が拒否する。
瓜生はこのジレンマをずっと抱えてきた。歩も理解はしてくれている。
だけど2人の距離が縮まっては離れ縮まっては離れるの繰り返し。
「…イツロ君」
「お前こそ、…嫌だよな。こんな甲斐性なし」
セラピーも考えた。けど、結局何もせずいる。
忙しくて時間がない、というのは逃げ。
その自覚はある。
「じゃあトカゲかって」
「だめだ」
「…蛇でもいい」
「気持ち悪いから嫌だ」
「タコでもいい」
「刺身にしていいか」
「……いいね。おいしそう。明日食べたい」
歩はニコっと笑いかけ瓜生の唇に軽くキスをする。
それが彼女の返事。
「前より成長してきたな」
胸は触れなかったがお腹をポンポンと軽く触れる瓜生。
そして意地悪なセリフ。
「お腹さわるのだめ。それにこれはイツロ君が美味しいものいっぱい作るからだよ」
「そうだな。じゃあ、野菜を増やそう」
「やだ」
「確かにスキンシップは必要だな」
「…やだ」
不満な顔に逆戻りする歩だが瓜生の頭の中にはすでに新しいメニューが
浮かんでいるようで満足そうな顔になっていた。こうなると止まらない。
暫くは野菜尽くしが続くのだろう。いや、永遠かもしれない。
「工夫するから安心しろ。お前の管理も俺の役目だからな」
「じ、自分でできるし!やっぱり私の事ペットかなにかかと思ってるでしょ!」
「歩は歩だ」
「歩っていうペットでしょ」
「……、ペットに尽くす俺は変態か?」
「もう」