偽りの御曹司とマイペースな恋を
月曜日が来て、ちょっと憂鬱な顔をしていた歩を励まして送り届け。
自分も会社へ。
「どうしたの一路君。そんな真面目な顔しちゃって」
「父さん」
ぼんやりと考えこんでしまったらしい、いつもの様にノックもなく
さっさと応接ソファに座っている養父にすぐにはきづけなかった。
本来この部屋の主であるはずの重要人物。
「辛そうな顔してたよね。君はまだ若い。私に出来ることなら
なんでもしてあげるから相談してみたら?」
珍しく父親らしいことを言いながら座りなよと空いている方の
ソファを指さされしぶしぶながらそれに従う瓜生。
「……」
「断片的でもいい。思ってること言葉にしてしまえばいいよ。楽になる」
「……歩が…その…」
「うん。どしたの?」
座ったものの、中々続きを口にしない息子。
よほど言いづらいのか、もぞもぞと不審な動きをして視線もそらし。
それでも養父は特に怒る様子もなく待っていた。
彼が中々シビアな過去を持っているのはもちろん知っている。
深い傷を持ちトラウマであることも。家で特にそれに触れることはないけれど。
何かしらのきっかけでそれが何か再燃することでもあったのだろうか。
あるいは、歩と喧嘩でもしたか?
「……可愛い」
でも答えがコレなのはいささか呆れた。流石に。
「小学生の感想文でも聞いてる気分。いや、それ以下ね。ひどいわ。ないわ」
「……」
養父の反応に理解が追い付かないのかただきょとんとした顔をする息子。
「要は歩が可愛いから抱きたいんでしょ?だったらそんな怖い顔しないで
抱けばいいじゃないのよ。一緒に住んでるんだし?
てことは彼女も君に処女をささげる覚悟はあるって意味なんだし」
「え?…いや…それは、出来ない。そういう意味じゃないし」
「何で?可愛いって思いながら下半身元気になっちゃってるんでしょ?
彼女に気つかって1人でするのも馬鹿みたいじゃないのよ相手が居るんだから」
「いや、…だから、…その、出来ない」
要領を得ない返事をする息子に若干呆れ気味の養父。
お互いにこんな話題の話をしたことがないからか
なんとなく2人ともテンパっているような会話になってきた。
「え。君もしかして…アレがデキないとか?」
「え?」
「え?」
「え」
「え…?…君、もしかしてそういう知識」
「……」
「君ね。たまにはレシピ本以外も読みなさいよ?お父さんが買ってあげるから」
「要らない」
ずっと一途に好きな子が居て、その子も自分を慕ってくれて。
同棲を初めて、
その子が好きで仕方ないのにその先へ進めないなんて。
絶望的な顔をする養父に意味がよく分かっていない息子。
瓜生も流石に父親に何か彼女との性的な話をされているのはうすうすわかる。
だからちょっと顔が赤い。
でも具体的な事は分からないから明確に抗議しようもない。
結局その場は何の解決も見いだせないままに定時を迎え瓜生は会社を出て部屋に戻る。
今日は歩が夕飯を作って待ってくれているはずだ。