偽りの御曹司とマイペースな恋を
「……そう、か。君も大変だったんだな」
「……」
身内の恥を晒し、自分がいかに薄汚れているか曝け出した瓜生。
歩の父はなんて男だと怒るかと思ったが深く頷いて言った。
聞きたくない話しだろうに、冷めた顔もしないで本当に心から。
それくらいこの人は優しい人なのだろう。
「だが。歩を100パーセント幸せにできる男にしかやらんと決めてる」
「……」
「君は50パーセントも自信が無さそうだな」
「……」
瓜生は反論出来ない。
父親の言う幸せにする、というのは毎日美味しいものを食べさせる事ではなく
ただ何不自由なく暮らせるというわけでもないのだから。
歩を幸せにしたい。
けど、彼女は自分といて幸せだろうか?
「私のと合わせたら100だもん!…たぶん」
「歩」
何時から聞いていたのか、あるいは聞き耳を当てて
ずっと側で聞いていたのか。
ドアを開けて入ってくる歩。そしてすぐ瓜生の隣に座った。
ギュッと彼の腕にしがみついている。離れたくないといわんばかりに。
「イツロ君はこんな顔してても結構ナイーブなんだよ。全部さらけ出してくれたのに。
こんな頑張ってるのに。もう無理に認めてくれなくていいです」
「歩」
「……こんな顔」
「何も言わないで。…居るから。ずっと」
ギュギュっとくっ付く歩の手にそっと触れる瓜生。
最初は戸惑っていたがその表情はとても明るく、嬉しそうで。
「勝負つきましたね」
と言ったのはお茶を持って後から入ってきた母。
「いいやまだだ。父親はそんな簡単に折れてはいけない。
50パーセントも自信のない男に大事な歩を託すのは不安だ」
「まあ強情」
「だけど、まあ、何だ。歩が不幸になる可能性は低そう…かな」
ちらっと娘達の様子を見ながらお茶を飲み、ぼやく。
「そんなこと私が許しませんからね」
「イチロー君」
「一路君ですよ」
「一路君、よかったら、その、まあ、何だ。様子見だ。様子見」
仲良よくしている2人を目の当たりにして少しは認めてくれたのだろうか。
相変わらず視線は合わせないが父の態度が軟化した気がする。
歩は嬉しくて
ぎゅっと瓜生に抱きついたらすぐに離れろと父に怒られた。
交際や同棲についてはとりあえずの様子見だが近づくのはだめ。
必要な場合を除き、歩に触れることは基本全て許さないとのこと。
そこは自信を持って大丈夫です!と明るく答える瓜生に不満な歩。
親公認の交際までの道のりはまだもう少しかかりそうだ。
けれど。
歩は自室へ瓜生を引っ張ってきて軽いキスをする。
「キスは出来るのにな」
「え?」
「まあ、いいか。ね、みてみて。これ私のコレクション」
「……」
「あ。今、何だこれキモ!って思ったでしょ」
「な、なんだと。すごいな。お前もしかして超能力でもあるんじゃないか」
「そんなのあったら今頃イツロ君月へ吹っ飛んでます」
「どうせなら火星へ行きたい」
「ばかぁっ」