偽りの御曹司とマイペースな恋を
「私はあります」
「なんだ。教えてくれ」
「そろそろいやらしーこと…しないんですか?その、恋人同士…だし…」
「しない」
「ほらそれ。その即答!」
「ご飯冷えるぞ」
「そうじゃなくって」
いつの間にか険悪な空気はなくなって何時もの2人に戻る。
片づけを歩が引き受けて。瓜生は心配そうだがそれを気にしないそぶりで
歩が買って来たレシピ本を読み始める。チラチラ彼女を見つつ。
手元の危ない歩に何時もなら「俺がやる」と割って入る所だが
ここは彼女を信じて。
「それでよかったか」
「激・リンゴちゃん鬼マックスはいぱー!」
「…変な名前だ」
「可愛い。ありがとう。高かったでしょ?」
片づけを終えた歩を呼び寄せ買って来たものを渡す。
中身を確認すると歩は嬉しそうにほほ笑んで瓜生の膝に座った。
それですべてが元通りになった。
瓜生はやっとほほ笑む。歩も。
「その話をしだすとまた喧嘩しそうだからやめとく」
「なにそれ。…無駄なお金つかっちゃったとか言う話ですか」
「お前が喜ぶなら無駄な金なんて思ってない」
「…イツロ君」
「けど正直その変な人形に1万はおかしい」
「へんじゃない!」
でもやはりこの話題は険悪になる。
「変だ。何でリンゴなのにまっ黒なんだ。何でリンゴなのに顔がついてる。
何で牙まで生えてるんだ。おまけにちょっと変な匂いする。どんな管理してるんだ」
「この良さが分からないなんて。それでも狂信者ですか」
「そんな変な物信じてない。一ミリも」
「いちみりも?」
「ああ。信じてない。どうでもいい。物凄く」
「くー」
「でもお前が好きだから付き合う。もう少しだけ」
悔しそうにする歩の頬に軽くキスをして愛しそうにぎゅっと抱きしめた。
「……ふふふ、これは調教のしがいがあるというものですよ」
「何だ?」
「いいえ」