偽りの御曹司とマイペースな恋を
二度あることは三度ある



運命の神様は私と彼を再び引きあわせてくれた。

複雑な家庭環境に生まれ落ち、施設で出会った2人が
離れ離れになったのはしかたのないこと。

成長してお互いを認識するのに時間がかかったけれど

もう一度仲良くなれた。

のに彼は体調を崩した養父の休養の為に一緒に遠くへ行ってしまい
やっと帰ってきてくれたと思ったら今度は出張で1人海外へ行ってしまった。

私は何時も何時もギリギリで知らされて何も言うまもなく待つだけなんて。

こんなのってアリですか神様?



「私をひとりにしないでって言ったのに」

彼、瓜生一路も奔放すぎる養父に翻弄されている所があるから
いきなりで事前に言えなかったのかもしれないけれど。

カレンダーを睨みながら指折り数えてこの日を待っていた歩。
帰ってきたらぼっこぼこにしてやる。それはもう容赦なくギッタギタに。
許してって言ったってそう簡単には許してやらない。

私はタダの友達でもペットでもない。れっきとした彼の恋人。

たまに不安になるけど。

時計を何度も確認して玄関が開く音を聞き逃すまいと耳を澄ませる。
もう空港を出てタクシーに乗ってこの部屋に向かっているはずだから。


数分後。

「ただいま。歩」
「イツロ君ーーー!」

ガチャっという音を聞くやいなや、玄関へ向かって猛ダッシュ。
玄関にはずっと待ってた人が笑顔で立っていた。
バカヤロウと叫んでやるつもりだったのにその顔を見たらそんなの吹き飛んで

かわりに名前を叫んで彼の胸に飛び込む。

「元気そうでよかった」
「うん。……じゃない。そうじゃないでしょ!ごめんなさいでしょ!」
「え?ああ、…うん。悪かった。半年もかかるなんて」
「10ヶ月と22日です!全然ちがうじゃない大嘘つき!」
「そうだったか?」
「そうです!」
「とにかく中に入ってもいいか?」
「……うん」





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