偽りの御曹司とマイペースな恋を



「ノゾミン大丈夫?結構良い値段したよー?」
「大丈夫。このために俺がどんだけ涙ぐましい節約とバイト尽くしの日々を送ったか」
「どくどくリンゴちゃんDXへの愛情は凄まじいね」
「彼女との出会いは運命、そう。これは一目ぼれだったんだ」

イベントを終えてやっと自分たちの住む街へ戻ってきた歩。
とその友人であるマニアな青年希。見た目は気さくな好青年。
だけど
彼は三次元よりも二次元に夢中になっているタイプの残念君。

「真顔でそれ言っちゃうからノゾミン彼女出来ないんだよ」
「え」
「そういう私も結構使っちゃったな」
「でも名栖は同棲してる彼氏が居るんだしさ。相手は金持ちなんだろ?」
「そうだけど。自分のお金すらちゃんと管理できないって思われるとやだから」

相手は年上、しっかりと社会人としての基盤を築いて代理であっても地位がある。
彼に見合う大人な女になりたいと一緒に住むようになってから思うようになった。
でも毒りんごは好きだしコズミックホラーも欠かさず読む。切り離せない。

あっちも相当マニアックだし、これくらいはいいよね?と言い聞かせている日々。

「自分で働いた金だし、欲しいものがあったらつぎ込むって悪い事かな」
「難しいよね」
「難しい?ま。俺らはそんな難しい事考えてないで飯でもくおうぜ」
「中華がいい。ラーメンがいい」
「まじで?俺もっとさっぱりしたもんがいいなあ。そばとか」
「ラーメンラーメンラーメン」
「…分かったよ。じゃあ。ラーメン」

渋々目についた中華飯店に入りラーメンを頼む。
2人とも買い物の後であまり余裕がないからいちばん安い中華そば。

そこでもイベントの話で盛り上がり、金がないと言いながら次回も必ず行こうと誓う。
店を出るとこれからバスに乗る希と別れ歩は一人マンションへと帰る。

瓜生は今頃畑だろうか。

あるいは店のカタログを眺めているのだろうか。
リンゴのイベントについては軽く説明してきたけれど、
ドン引きされそうな限定リンゴを買ってしまったので怒られるかも
品は隠して何もなかったように部屋に入りリビングへと入った。

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