偽りの御曹司とマイペースな恋を
共にあります。
「そうか、俺。…誰にも触れて欲しくないんだ。俺自身さえも、許せないんだ」
「…やだ。他はいいけど。イツロ君には触って欲しい」
「綺麗なお前が好きだ。でも。たまに、……俺と一緒になればいいのにと、思う」
そう思うのは何時も彼女と距離を感じる時だ。
歩と喧嘩しても怒られても何処かほほえましく思えるのに。
自分の不完全さで彼女が遠くへ行って帰ってこない気がすると、
不安になると、
ついよからぬことを考える。
どっぷりと歩との生活に浸って幸せでそれが普通になっているから。
訪れるかもしれない終わりが怖くてたまらない。
「いいよ。一緒になろう?ね。一緒にして?イツロ君。一緒がいい。…どうせ、離れないんだもん」
「……」
何時もは自分で蓋をするのに、歩がそれを阻むようにそっと唇にキスをする。
「…お願い」
「……」
イツロ君は返事をしてくれない。
でも否定もしないのは、それは肯定と受け取っていい?
「じゃ。じゃあ。脱ぐね」
「……、え。あ。いや。まて!まて!カーテン!」
上着を脱ぎ始める歩。
ぼんやり見ていた瓜生だが我に返り慌てて歩から離れ
部屋のカーテンを閉める。薄暗くなる室内。
「も、もう。気が早いな。まだ下着を」
「い、いや!歩!違う!違うよ!俺はまだそんな」
「一緒になるんだもん。待ってね。すぐ…あ。それともシャワー?」
「……そ、そう、だな。よし。歩。シャワーだ」
「うん!じゃあ一緒に」
「お前が先」
歩は嬉しそうに風呂へ向かい。
「……イツロ君が夕飯作ってる」
戻って来たら台所で一心不乱に料理をしている瓜生が居た。
「精神を集中させるためにから揚げを作ってる」
「…あの。シャワー入ってきた」
「そ、そうか。いや!お前!何で服着てないんだ!」
「だって要らないと思って」
タオル一枚。もちろん中は下着ははいていない。
ソファに座り瓜生を待つ。
「い、いるだろ。…いるだろ?」
「要らないよ」
明らかに落ち着きがないオロオロしている瓜生。
歩はもうここまできたらタダでは服は着ないぞと意気込む。