偽りの御曹司とマイペースな恋を
偽りの御曹司と
「名栖、悪いけどこの企画書誤字があったから直しておいてくれ。
なおす箇所は赤ペンしてるから」
「はい」
「でも大丈夫なんだろうか。色々と企画を投げ込んで幾つかOKでちまったが」
「楽しそうですよね、キャラクターを作ったりアニメ化とか」
瓜生の登場で最初は恐縮してばかりだった職場の先輩達。
でも何度も会議をして企画を立ち上げて、
少しずつお互いにプライベートな話をするようになって。
「まあなあ。でも、瓜生さんがバックについてるんだし大丈夫だろう」
「はい」
今では信頼を集めつつある。とりあえず、気分屋な編集長よりも。
「おいナス!この前の資料何処に置いた」
「は、はい。こっちに」
「お前なあ、自分のもんじゃないんだ。もっと気をつけておけ」
「すいません」
どうもまた最近は奥さんと喧嘩中、ついでに娘が反抗期とのことで。
企画も忙しいけれどこちらのご機嫌取りも大変。
「いやあ。どうもどうも、みなさんご機嫌いかがですか?私はとてもいいです」
お昼を過ぎた辺で突然編集部に入ってくる大柄の男。
皆きょとんとして思わず作業の手が止まった。
「……あっ」
唯一見覚えがあった歩は不味そうな顔をして顔をそらす。
「あ。あの…えっと、あ。瓜生先生」
「そうです。私が瓜生です。いいえ、宇宙です」
「え?」
来たのは瓜生の養父。真面目な顔をして突拍子もない事を言い出すので
先輩は素できょとん。作家なのでここでのやりとりはあったらしいが最近は音沙汰なく
久しぶりで常に髪型や服装を入れ替える変人なので理解するのに時間がかかった。
「いやあ、息子たちが頑張っている所を見たくてウズウズしてたんですよ。
でもね、一路君は怖い顔して絶対来るなっていうから。邪魔しちゃいけないと思って。
でもついに来ちゃいましたよ、近くでランチしてたんでね。ちょうどいいかなって」
「……は、はあ」
先輩の手を握りニコニコと怖いくらいの笑顔。
これで幾つもの会社を束ねる瓜生家の当主。
息子が言うにはビジネス面ではとても頭がキレて厳しく冷徹らしいけれど。
歩も結構な電波だったりマニアだと思っているが
このオジサンは規格外だと思っている。
「さてと。歩!歩!おいでこっちおいで!仕事をしているレアな所がみたいなぁ」
「ぎゃあっ」
「何で悲鳴を上げるの?パパだよ歩」
「パパ!?」
「ぱ、ぱぱ!?」
「勝手にパパ言うな!」
規格外が来たせいで職場の空気がおかしくなってきた。
助けてイツロ君。