偽りの御曹司とマイペースな恋を
一緒に朝食を食べて途中まで車で送ってもらって会社へ。
衣食住すべてにおいて彼に任せっぱなし頼りっぱなし。
それじゃいけないと思いながらでもなにが出来るのか考えて。
「お母さんにメールしとこ…」
夕飯は豪華にしようとさっそく母親に助けを求める歩であった。
「お帰り社長サマ。で?同棲生活は順調?」
「来たな瑞季」
「来たよ。で。どうなの?」
「何が知りたい」
「だから。順調かどうか」
歩を会社まで送り届け、久しぶりの本社。秘書たちに出迎えられ席につく。
それを見計らったようにノックもなしに入ってくる男。
気楽そうに応接用のソファに座って興味ありげに此方を見つめている。
「特に問題はない」
「そう。上手く行ってるんだ。俺も今度遊びにいこうーっと」
「別に来なくてもいい」
「まあまあ。俺が煩いオバサマ連中を説得してあげたんだから」
この男は父の姉の息子。
つまりは瓜生家にとって血の繋がりのある後継者に相応しい人間。
のはずだが大学を出ても会社にも家にも関わる気はみせずのらりくらり。
母親である叔母はコレを良しとせず彼を当主にすべく働きかけているのだが
養父はたいへんな天邪鬼。それを面白おかしく傍観するだけ。
結果、養子である瓜生に何かと面倒が降り注ぐことになる。もう慣れたが。
「そういうがそもそもお前がこの席に素直に座れば俺は何も」
「噂じゃ自分の部屋に鍵かけてるんだって?彼女の事信じてないの?」
「そうじゃない。プライベートは分けたいだけだ」
「お前のプライベートなんて料理と菜園と彼女しかないくせに」
「煩い。仕事の邪魔をするなら出て行ってくれ。それとも手伝ってくれるのか」
「じゃあ今度は歩に感想聞いてこよーっと」
「歩に余計な事を言うなよ」
「分かってるって」
厳しい視線を向けるが相手はニヤリと笑い部屋を出て行った。
なんとなく嫌な予感しかしないが仕事を抜けるわけにもいかず。
新人で頑張って働いている歩の邪魔をすることもできない。
何もなければいいと瓜生は深い深い溜息をした。