一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
電車を乗り継いで四十分。駅を出るとこれから向かう病院の“開院準備中”と書かれた大きな看板を見つけた。
ロータリーで客待ちのタクシーに乗り、行先を告げる。
後部座席で今回のいきさつを整理しながら謝罪の言葉を考えてみる。しかし、ひとつの思いだがどうしても拭いきれない。これは私のミスなのだろうか。
それからタクシーはワンメーターほど走って目的地にで到着した。領収書をもらい車を降りるが、どこから入っていいのか分からない。正面入り口は封鎖されている。
そこで私は担当営業である隆に電話を掛けてみることにした。
「はい、西尾です」
何回目かのコールの後で出た隆の声は、殊の外不機嫌で私は言葉に詰まる。
「……あ、天野です。今、病院の正面にいるんですが、どちらに向かえばよろしいでしょうか?」
「遅かったな」
「すみません」
「まあ、いい。そこから左手に回ると救急車が到着する入り口がある。インターフォンを押して、フタバメディカルのものだと名乗ればここまで案内してもらえるはずだ」
「分かりました」
電話を切ると私は、隆の言った通りに正面入り口から左手にぐるりと回りERと書かれた自動ドアの前のインターフォンを押した。