一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
「はい」
応答したのは女性の声だった。私は緊張気味に名乗る。
「こんにちは。私、フタバメディカルの天野と申します」
「はい。少々お待ちください」
しばらくすると、スーツ姿の女性が中から姿を現した。首から下げIDカードには総務課とある。
「どうぞ、中へお入りください」
「失礼します」
手動で開けられた自動ドアから中に入り、真新しい建物の中を進んでいく。誰もいないエントランスホール。静かすぎる廊下。病院の無機質さが余計に際立ってなんだか落ち着かない。
「静かですね」
前を歩く総務課の人に話しかけてみる。するとニコリともせずに、「開院前ですから当然です」と言われてしまった。
「そうですね」
私はそれだけ言って口を噤むことにした。
そこからしばらく歩いてスタッフオンリーと表示されたドアを抜ける。するととようやく人の気配を感じることができた。
「こちらです」
案内されたのはMEセンター。ここはおそらく院内の医療機器を管理する場所だろう。さらに奥の部屋には最新の医療機器と共に、今朝納品した人工呼吸器が二台おかれていて、その隣には本社のエンジニア、そして隆が立っていた。
「遅かったな」
隆は私を見るなりそう言って、大きなため息を吐いた。