一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
「どんな事情があっても、人を傷つけるのはいけませんね。特に女性は大切に扱ってあげてください」
男性は穏やかに隆を諫める。しかし興奮状態の隆は、今度はその男性に食って掛かる。仕事中ということさえ忘れているのだろうか。
「あんたには関係ないことだろ」
「関係はあります。ここは、私の病院ですから立ち入る者は私の定めたルールに従っていただかなければなりません。ね、天野さんもそう思うでしょう?」
ほほ笑みと共に名前を呼ばれて、私は驚いた。そして、記憶の糸を辿る。私はこの人とどこかであっている。どこかで……。
「永峯医院長ですよね?」
「……医院長だって?」
隆の顔はみるみる青ざめて行き、後ろに立っていたエンジニアは頭を抱えた。
「あなたが、医院長?」
声を震わせながら隆は確かめる。
「ここでは理事長ですがね。別の病院では医院をしています。永峯総合病院といいます。どちらも私が経営しているんですよ」
「……うそだろ。開院準備室の小沢さんは?」
隆は依然として姿を現さない担当者の名前を呟いた。おそらく無意識に。
「小沢は急用ができましてね。彼も彼で相当多忙なんです。すべて任せっきりにしていたんじゃいけないと思っていたんですが、今日ここへて来てよかった。いろんな意味でね」