一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
「こちらです」
「こちらですって、社長室?」
嫌な汗が滲んだ。緊張のあまり心臓が締め付けられるように痛い。
中から出てきた綺麗な顔の社長秘書は、「社長がお待ちです」と私を奥の部屋へと連れて行く。
「社長、天野さんがお見えになりました」
社長は私の顔を見ると「朝早く呼び出して悪かったね」といいながら応接セットのソファーに座るように促した。
入社式以後、写真でしか見たことがなかった社長。まだ四十代。父やの後を受け継いでさらに業績を伸ばし続けているやり手で、とても厳しい人だと聞いている。
「し、失礼します」
「どうぞ。そう固くならずにお座りなさい」
そう言われても緊張しないわけがないじゃないか。私は柔らかなソファーに身を沈めて、噴き出た汗をハンカチで拭いた。
「早速だけど、本題に入らせてもらおうか。この後会議が入っているんだよね、申し訳ないがあまり時間が取れないんだ」
「はい」
「どうして呼ばれたかは分かっている?」
「昨日の件だと思います」
それ以外考えられない。
「じゃあ、話は早いね。君、営業部に戻りなさい」
「はい、え?」
いきなりの展開に驚きを隠すことができない。見開いた目で社長をみつめた。