一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
「天野さん、会議資料作って欲しいんだ」
私の営業部への出戻りを望んでくれていたのは菱沼さんだけじゃないらしい。
そう感じることができたのは、こうしてみんなが私に仕事を頼んでくれるから。
「今日の午後までに間に合わせることってできる?」
「大丈夫です。作っておきますね。何部ですか?」
「二十部。ほんと助かる。天野さんいなくなって、正直どうしようかと思っていたんだよね。戻ってきてくれて嬉しいよ」
私もうれしいです。そう声高らかに言いたかったけれど、まどかの視線が痛くてできない。
仕事に集中しよう。私はパソコンに向かった。途中、トイレに立つとこともあろうにまどかがついてくる。
「天野さん」
トイレの入り口で呼び止められ、私はため息を吐きながら足を止めた。
「なに?」
「天野さんって、営業として戻ってきたんですよね」
「そうだけど」
「じゃあなんで、事務の仕事してるんですか? 私の仕事盗らないでください」
まどかは握った拳をかわいく震わせている。傍から見たら、また私がいじめている様に見えるかもしれない。
もしかしたら私はまた彼女の借略にハマっているのだろうか。
そんなことが一瞬頭を過ったが、気にするのは辞めにした。