一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
「三上さんあのね、正確に言うと、営業兼事務なの。表向きは営業として戻されたけど、担当施設はひとつだけ。だから、いままでどおり事務の仕事もするよ」
担当施設というのは、永峯理事長の病院のこと。営業素人の私のサポートに菱沼さんが付いてくれることになるので、私としてはとても心強いし、永峯理事長も安心できるだろう。
「このことは部長も知ってるはずだけど、聞いてない?」
「……聞いてません」
「そう。じゃあ、そういうことだから」
部長のことだから話していないはずはないと思うが、あえてそこを追及するのは辞めにした。
もうまどかのことは放ってこう。仕事の邪魔になるようなことさえしなければそれでいい。
問題は隆。おとといから顔を合わせていないのだが、彼こそ私の出戻りを快く思っていないだろう。
社長は隆のことを処分するつもりなんだろうか。するとしたらいつ、どんな処分を下すのだろう。考えたら少し胸が痛んだ。
酷いことをされたはずの相手を不憫に思うなんて可笑しい。でも私は、仕事を頑張る彼が好きだった。いいところもたくさん知っている。
だから私を二度と傷付けるようなことはしないというのなら、処分を取り下げてもらえるよう社長に頼んでもいい。
営業部に戻る途中、廊下で隆を見つけた。しかし彼は私の方を見ることもなく、エレベータに乗り込む。気付いていただろうに。私はため息つく。
「そうやって無視しちゃうと、ますます気まずくなっちゃうじゃない」
それから私は外出の準備を整える。これから永峯理事長の経営する病院へと向かうのだ。今朝メールで改めてご挨拶に伺いたいと伝えたら、今日のお昼なら時間が取れるという返事だった。