一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~

 注文した料理が出来上がるまでの間、私は持って来ていた新製品のパンフレットを理事長に差し出した。

「弊社の新しい血糖測定器です。従来のものよりもコンパクトにしつつ、デザイン性に拘りました。このモデルは小児向けですが、大人の患者様にも人気です」

 少々緊張しながら話す私の言葉を、理事長は頷きながら聞いてくれる。

「いいですね。音が鳴るんですか?」

「はい。苦痛な血糖測定を少しでも楽しんで使えるようにという工夫です」

 血糖測定器というのは、いわゆる血液の中の糖分を消え則する機械で糖尿病を患う患者は大人に限ったことではない。そこで、子供に人気のアニメのメロディーを起動時に鳴るようにしたと開発担当者から聞いている。

「なるほど、では十台。小児病棟で使ってみることにしますよ」

「……あ、ありがとうございます!」

 勢いよく頭を下げた私はテーブルに頭をぶつけてしまい恥ずかしい思いをしたのだけれど、それ以上に初めて自分で取った契約が嬉しくて泣いてしまいそうだった。

< 120 / 192 >

この作品をシェア

pagetop