一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
それからゆっくりと食事を楽しみ、理事長室へと戻ってくると入れてもらったコーヒーを飲んだ。
永峯理事長は時折かかってくる電話の対応をしながら、趣味である音楽の話を私に話して聞かせてくれた。それがとても楽しかったので、ついついお客様であることを忘れてしまいそうになる。名の知れたお医者様であるということでさえもだ。
私はふと、本当に偉い人というのは、権力を振りかざしたりしないものなのかもしれないと思った。
「ところで、天野さん。来週の土曜日の夜はお暇かな?」
そう聞かれて私は頭の中のスケジュール帳をめくったが、特に予定はなかった。
「はい、空いております」
「そうですか、よかった」
理事長は秘書を呼び寄せて、なにやら指示を出す。少しして秘書が運んできたのは上質な紙でできた封筒だった。