一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
僕は、脱げた彼女のパンプスを拾いあげ、呆然と立ち尽くす。
「游、なにをやってるんだ」
そんな僕に父が声を掛けた。突然いなくなった僕を探しに来たんだろう。
「早く戻りなさい。皆さんがお待ちかねだ」
「それは分かってるけど、あの子が急に出て行ったりするから心配になってね」
余計な詮索はされてくなくて、僕と彼女が知り合いであるということは言わなかった。
「ああ、天野さんか。どうしたんだろうね。何か急用でも思い出しなんじゃないか?」
「うん、そうならいいんだけど」
なんて、そんなはずがない。彼女は僕の正体を知って、逃げ出したんだ。きっと騙されたと思ってる。
「……父さんごめん、僕帰ってもいいかな」
追いかけなきゃ、今すぐ。けれど父は首を横に振る。
「それはだめだ。普段、あれほど自由にさせてやってるじゃないか。こういう時くらいは親の顔を立ててくれないか」
「でも」
「でもじゃない。私の話を聞きいれないのなら、明日からでも永峰病院に戻ってくる覚悟でいなさい」
穏やかだけれども、反論は許さないという口調。
「分かったよ」
僕は父の言葉に逆らうことが出来なかった。
早く彼女に会って、ちゃんと話しをしなければ。
パーティーの間中、僕はそればかりを考えていた。途中バルコニーに出て由衣子ちゃんに電話を掛けた。
しかし、呼び出し音が鳴るばかりで電話には出てくれなかった。