一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
游さんがいなくなった部屋で、私は今日買って来た雑貨の包みを開けた。
お揃いのマグカップ。食器やお箸やエプロン。スリッパも。游さんお部屋には少し可愛すぎたかなと思うけど、これからまた新たな生活が始まるのだと思うと、心が躍った。
それなのに、以前よりも忙しくなってしまったという游さんはなかなか家に帰っては来ず、すれ違いの日々が続いてしまった。
游さんが言うには、前のアパートは勤務している病院から近かったのでちょくちょく帰ってくることができたのだそうだ。
でも、今のマンションは車で四十分の距離。帰宅が遅くなると睡眠時間が削られてしまうので、仕方のないことだと思う。
それに、呼び出しがあってもすぐに向かえないと患者さんの命にかかわるから。だから私は何も言わずに我慢していた。さびしくても、言葉には出さずに。
医者と、特に外科医と付き合うならひとりの時間を過ごせる女になれ。
何かの恋愛特集の記事でそう書いてあったのを思い出す。
「……浮気は疑うな。もしくは許容しろ。だったっけ」
リビングで洗濯物を畳みながらひとり呟いて自嘲気味に笑った。
会いたい。さびしい。そう言ったらきっと無理をしてでも駆けつけてくれるに違いない。そんな游さんだからこそ我儘が言えなでいたのだ。