一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~

 游さんと暮らし始めて二か月が過ぎ、季節は夏から秋へと移り変わった。

「天野さん、お客様だそうです」
 
 後五分で退社時間だという時になって、来客があったようだ。受け付けからの電話に出たまどかは、私にそう知らせた。

「こんな時間に誰? そんな予定なかったはずだけど!」

 今日は来客の予定はなかったはずだ。もう一度スケジュール帳を見ていても、そんな予定はない。

「私に言われても知りませんよ。もうすぐ上がってくるんじゃないですか?」

 しれっとまどかは言う。

「え、通しちゃったの?」

「はい」

 あれほど、客の対応は確認してからにして欲しいとお願いしておいたのに、なんど言っても直そうとしない。これで、どうでもいいセールスとかだったりしたらどうするつもりなんだろう。

そうこうしているうちにインターフォンが鳴った。私は電話の受話器を上げて応対する。

「はい、営業部天野です」

《永峯と申します。……由衣子?》

「游さん?」

《うん、突然来ちゃってごめんね。携帯に連絡したんだけど、返事なかったから》

 そう言われれば、昼休み以降、スマホはカバンの奥にしまったままだった。

「ごめんなさい、今行きます」

 私は受話器を置くと、ドアへ駆けて行きガチャリと開けた。

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