一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
ひとり改札を抜けたまどかは、あわてて引き返そうとするが人の波に阻まれて戻ることができない。
「じゃあ、行こうか」
游さんは私の肩を抱くと、改札口を背にして歩き出す。
「游さん、電車は?」
「実は、車できたんだ」
「なんだ、そうだったんですか。言ってくれればよかったのに」
「だって、そう言ったらあの子、乗るって言いそうだったから」
「確かに」
私は「のせて」と言い張るまどかを思い浮かべて思わず苦笑いする。それと同時に、まどかになびかない游さんでよかったと胸をなで下ろした。
「今夜はどこへ行こうか? 夕飯には少し早いからドライブでもする?」
「いいですね、ドライブ。でも、私は游さんといられたらなんでもうれしいです」
それが本心だった。最近すれ違いばかりだったから、一緒にいられるだけで十分幸せだ。
「そういうかわいいこと言うと、ホテルに直行したくなる」
「……それは」
「だめ? 僕だって由衣子ちゃんに会えなくて辛かった」
「私もです」
突然額にキスをされて、思わずスイッチが入ってしまいそうになった。
「……でも、ドライブもしたいです」
游さんと過ごせるならなんだっていいとは思うけれど、最近デートらしいことができていなかったから。游さんには少しだけ我慢させてしまおう。
「だめ、ですか?」
「ううん、だめじゃない。由衣子ちゃんの仰せのままに」
私たちは来た道を少し戻って游さんに車に乗り込んだ。