一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
それから、私と隆が別れたという噂は瞬く間に社内へ広がっていった。
「ねえ、聞いた? 営業部の天野って人、後輩イジメしてて彼氏にフラれたらしいよ」
「あー、知ってる。それでその後輩を彼氏が慰めているうちに恋に落ちちゃったって話でしょ? なんか、ドラマみたーい」
どのタイミングで出て行けばいいのか分からなくなってしまった女子トイレの個室で、私はどこの誰とも分からない女子社員の噂話を聞いていた。
しかし、どうして真実はこうも捻じ曲がるのだろう。いつ私がまどかをイジメたのだろう。私の方がいじめられている気がする。
この間も、隆のプレゼン資料を作っているとまどかが自分がやるといいだして、USBごと持って行ってしまった。そのまま放置していたら、タイプミスが山のようにあって、それに気付いたのが配付後だったらしい。
隆は恥をかいたと激怒し、どうしてまどかに仕事を押し付けたのか、なぜ最終確認をしなかったのかと怒鳴った。
見かねた部長が助け舟を出してくれなかったら、私は隆に殴られていたかもしれない。
そして持ち上がったのが、チームを再編成するという話だった。
営業部は担当するエリアごとに四つに分かれていて、隆を筆頭としたAチームには私とまどか、菱沼さんを含む五名がいる。そもそも、営業事務は各チームにひとりの配置だったが、去年新人として入ってきたまどかは、まだひとりとしてカウントされていない。
それをどう、再編成するというのだろう。