一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
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「隆、喜ぶかな」
 
 新幹線は早い。あっという間に私を好きな人の所へと運んでくれる。

逸る気持ちを押さえて、座席上の棚から大きな紙袋を下ろす。品川の駅に降りると、都会独特の重たい空気が私体を包んだ。

 高校の同窓会に参加する為に実家に帰省していた私は、暇を持て余した為、三連休を一日残して東京に戻ってきた。

恋人の隆が好きだと言っていた郷里の土産物を買いこんで、伝えてあった日よりも早い帰宅。

渋谷で地下鉄に乗り換えて、ふたつめの駅で降りた。

 世田谷にある賃貸マンションは、フルリフォーム済みで、築四十年には見えない佇まい。
部屋の間取りは1LDK。玄関を入ると廊下があり、両脇にキッチンとバストイレがある。その先にリビング。右側に寝室。南向きで日当たりがいい。

エレベーターがないのが玉に傷ではあるが、毎日の階段の昇り降りもダイエットになると思えばそれも苦労に感じない。

「ああ、でもこの荷物の量はさすがにきついかも知れない」

独り言ち、私はスーツケースを持ち上げると階段を二階まで昇る。

「……よし、ついた、と」

上った息を落ち着かせ、バックから部屋のカギを取り出す。廊下に音が響くので、いつもそっとドアを開けて、閉める。その習慣が仇となってしまったのかもしれない。

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