一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
買い物かごを手に、店内を回る。
「游さんはなにが食べたいですか?」
「うーん、そうだな。由衣子ちゃんの得意料理」
「私の得意料理、ですか?」
得意料理と言われても、直ぐに思いつく料理はない。そこそこ作れて、味もそこそこ。それが私の腕前だ。
「じゃあ、カレーなんてどうですか? これから煮込むと時間がかかるので、キーマカレーにしようかと思います」
「いいね、カレー」
「辛いの平気ですか?」
「うん、大丈夫」
ひき肉と玉ねぎ、にんにくショウガ、トマトの缶詰に市販のカレールウ。卵にサラダ用のカット野菜。次々に買い物かごに入れていく。
「……あとは、なにが必要だろう」
独り言のように言うと、游さんが直ぐに反応してくれる。
「米はあるよ。ビールがない。飲むでしょ、ビール」
「はい、飲みたいです」
「なにがいい?」
「お任せします」
游さんはビール数本手に取り、いつの間にかいっぱいになったかごの中に入れる。
「買い残しはない?」
「はい、大丈夫だと思います」
私たちはそのままレジへと向かった。
「お会計は、四千三百七十円になります」
「じゃあ、これで」
当たり前のように五千円札を出す游さん。私はすかさず自分のクレジットカードをキャッシャーのお姉さんに手渡す。
「カードでお願いします」
「由衣子ちゃん、いいよ、僕が出すから」
「いいえ、支払わせてください!」
「わ、分かった」
私の勢いに押されるように游さんは五千円札を財布に納めた。