一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
スーパーを出ると、游さんは改まった様子でわざわざお礼の言葉をくれる。
「どうもありがとう」
「いいんです。昨晩のお礼と、今晩の宿代だと思ってください」
「今晩?」
「……はい、今晩。引き続き泊めてもらっても、よろしいでしょうか?」
今度は私が改まる番だ。色々考えた結果、このまま泊めてもらえたらいいな、だなんて思ってしまった。もし断られたら、そのときにどうするかかんがえればいいや、とも。
「だめ、ですか?」
「いや、いいけど」
「本当ですか? 助かります」
「まだ、慎一郎が紘子ちゃんのマンションにいるんだね」
「ええ、まあ。今後は一緒に暮らすっていってました」
「一緒に暮らす? じゃあ、由衣子ちゃんはどうするの?」
「私は、急いで住むところを見つけないといけないんですけど、そんなお金もなくて、どうしようか考え中です」
「そうか、それは困ったね。……それまでなら僕のアパートに住んでもいいけど」
「……いいんですか?」
「由衣子ちゃんがよければ僕は構わないよ。慎一郎のせいでこんなことになったんだし、親友として、それくらいの責任は取らせてもらうよ」
迷いはなかった。游さんとなら上手く暮らしていける気がした。
彼はとても紳士的で、男特有のギラギラしたものがない。つまり、襲われる心配もないということだ。
それはひと晩過ごしてみてわかった。
「よろしくお願いします」
こうして私は、夏のボーナスをもらったら出て行くことを条件に、游さんのアパートで暮らすことになったのだった。