一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
玄関のタイルには、隆の靴と見慣れない女ものの靴がちょこんと置いてあった。見ればフェラガモ。私へプレゼント――ではないことくらい容易に想像がつく。
私はごくんと唾を飲み込んだ。よくある漫画やドラマではこの先の部屋で、よからぬことが起きている。
私はスーツケースをそのままに、靴をぬぐ。そろそろと廊下を進みリビングのドアを開けた。
テーブルの上にはビールの空き缶と、食べかけの宅配ピザの残骸。床には脱がされたであろうワンピース。ブラジャー。破れたパンスト。そしてショーツが落ちている。
それらは寝室まで転々とつながっていて、脱がされながらベッドインしたのだろうと思わせる。
私の想像を裏付けるように、さっきから聞こえてくるのは、男女の甘く激しい息遣い。規則正しく軋むベッドの音。もっととねだる女の声。
気が狂いそうになるのを堪えて、私は一縷の望みに賭けてみる。
あそこにいるのは隆ではない――と。
隆が友達に部屋を貸したのだ。
だから、今ベッドにいるのは、私の知らない人たち。
もしそうだとしたら、勝手にベッドを使われるのはいやだけど許してあげてもいい。