一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
「すごくよかったです。心が洗われるっていうか、なんていうか」
つまりは、言葉にならないくらい良かったということだ。
「ならよかった。この後の食事会、天野も一緒に行く? 銀座のフレンチだったと思う、確か」
菱沼さんはスマホのスケジュール帳を開きながら言った。
「食事会って、打ち上げみたいなものでしょうか?」
「そうじゃない」
「それならなおさら、私なんかが参加しちゃいけないんじゃないですか?」
「大丈夫だよ。永峯医院長から直々にお誘い受けてるの。女の子が増えれば医院長も喜ぶし」
「……喜ぶって」
接待要員というか、無料ホステス扱いされてしまうんだろうか。なんか、そう言うの苦手だ。
「ちょっと天野、何その嫌そうな顔。もしかして、エロいオヤジを想像した?」
こくん、と頷く。すると菱沼さんは慌てて否定する。
「ちがうちがう! 永峯医院長はジェントルマンだから安心して。うちの製品も、きちんと評価して購入してくれるし、ダメなものはどうダメなのか言ってくれる。医者としてと言うより、人間として好きなんだよね」
菱沼さんが言うには、永峯医院長はご家族をとても愛していて、それと同じように病院の職員も、患者も大切にする人なんだそう。
「そんな人ならお会いしてみたいです」
「じゃあ、決まり。美味しいものたくさん食べよう!」
演奏会の余韻もそこそこに、菱沼さんと二人で席を立つと、タクシーで銀座を目指した。