一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~

「ああ、ここだよ」

 菱沼さんが立ち止まったのは、予約が取りにくいことで有名な店。ランチの時間帯とはいえそこを貸し切りにしてしまうなんて、すごいとしか言いようがない。

私たちは重厚な扉を開けて、店の中に入った。レセプションで記帳すると、既に人でいっぱいになったフロアーに足を踏み入れる。

「ドリンクをどうぞ」

「ありがとうございます」

 ウエイターが差し出したシャンパンのグラスを受け取る。乾杯用だろうか。
純白のテーブルクロスが敷かれた大きなテーブルには、色鮮やかな料理がたくさん並べられている。キャビアやフォアグラ、ローストビーフ、普段なかなかお目にかからない食材のオンパレードだ。

早く食べたい――けれど、その前に、永峯医院長への挨拶を済ませなければ。

「菱沼さん、永峯医院長はどちらにいらっしゃいますか?」

「えと、ちょっと待って」

 菱沼さんはあたりをぐるりと見渡して、永峯院長の姿を探しているようだった。

「いた、みつけた。いくよ、天野」

「はい、あ、ちょっと待ってくださいよ」

 人をかき分けて進む菱沼さんに私は慌ててついていく。

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