一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
月曜日。私はスーツに身を包んでアパートを出た。游さんは私にリラックスしていっておいでと言ってくれたけれど、異動になって初めての出勤。否が応でもまるで新入社員のような不安と緊張が入り交じる。
東京と埼玉の境目にあるフタバメディカル東京物流センターは、最寄駅から少し離れている。
人員はセンター長と商品のメンテナンスを行うエンジニア、倉庫に物品を管理する従業員、私を含めた事務員二人ずつ。配送は委託。少人数ではあるけれど、東京以北の関東四県を担当している。
「徒歩十五分なんてウソばっかり」
おそらく30分近くは歩いたであろう。従業員は全員がマイカー通勤と教えてくれたのは、汗だくで出社した私をロッカーに案内してくれた五十代の派遣事務員の蓬田さん。
「歩けない距離じゃないけど、私には無理だね」
蓬田さんは笑いながら言う。
「私にも無理です」
「だったら、バスで来ればいいよ」
「あるんですか? バス」
「あることはあるけど、バス停が遠いんだよ。後で教えてあげるから、これに着替えて頂戴」
はいと渡された制服はベストとひざ丈のボックススカート。色は少し褪せたようなネイビー。着ていたブラウスの上にベストを着て、スカートをはきかえた。いかにも昭和の事務員。と言った格好に、思わずため息が漏れる。