一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~

 翌朝、私はスマホのアラームで目を覚ました。ムクリと体を起こし、視線だけで紘子を探す。

「おはよ、紘子」

 紘子はキッチンカウンターの高いスツールに座り、パソコンを弄っていた。

「ああ、おはよう。顔、洗っておいでよ」

「そうする。タオル借りていい?」

「棚の中にあるからご自由に」

 洗面所に向かい鏡を覗く。すると、その向こう側の私は驚くほど不細工だった。腫れ上がった目にそっと触れて、大きなため息を漏らす。

 昨日はあれから、紘子が開けてくれたワインを飲んで大泣きした。紘子はあんな男のために泣くなと言ったけれど、好きだったんだから仕方ない。

だから、しばらくは思い出しては泣くと思う。うるさいといわれても、うじうじと泣いてやるんだから。

「ねえ、由衣子ー、コーヒー飲む?」
 
 キッチン方から紘子の声がする。

「うん、飲む」

 私は洗面所から顔だけ出して答えた。

「じゃあ、淹れるね」

「ありがとう」

顔を洗って濃い目のメイクを施すと、どうにかみられる顔になった。

それからマンションを飛び出すときに持って来ていたスーツケースを開けて、仕事に着て行けそうな服を選ぶ。

黒のスキニーパンツにたくさんビジューの付いた白のカットソー。少しラフだけど今日は会社から出る予定もないので大丈夫だろう。

< 8 / 192 >

この作品をシェア

pagetop