一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
翌朝、私はスマホのアラームで目を覚ました。ムクリと体を起こし、視線だけで紘子を探す。
「おはよ、紘子」
紘子はキッチンカウンターの高いスツールに座り、パソコンを弄っていた。
「ああ、おはよう。顔、洗っておいでよ」
「そうする。タオル借りていい?」
「棚の中にあるからご自由に」
洗面所に向かい鏡を覗く。すると、その向こう側の私は驚くほど不細工だった。腫れ上がった目にそっと触れて、大きなため息を漏らす。
昨日はあれから、紘子が開けてくれたワインを飲んで大泣きした。紘子はあんな男のために泣くなと言ったけれど、好きだったんだから仕方ない。
だから、しばらくは思い出しては泣くと思う。うるさいといわれても、うじうじと泣いてやるんだから。
「ねえ、由衣子ー、コーヒー飲む?」
キッチン方から紘子の声がする。
「うん、飲む」
私は洗面所から顔だけ出して答えた。
「じゃあ、淹れるね」
「ありがとう」
顔を洗って濃い目のメイクを施すと、どうにかみられる顔になった。
それからマンションを飛び出すときに持って来ていたスーツケースを開けて、仕事に着て行けそうな服を選ぶ。
黒のスキニーパンツにたくさんビジューの付いた白のカットソー。少しラフだけど今日は会社から出る予定もないので大丈夫だろう。