一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
少し飲み過ぎてしまった。少し足がふらついた。タクシーで帰ろうか悩んだが、結局電車に乗った。
時刻は午後十時を回ってはいた。電車は相も変わらず混み合っている。どこからこんなに人が湧いてくるのかと思うくらいだ。
ドア付近に立って、ふと顔を上げると少し離れた所に立っている隆とまどかの姿を見つけてしまった。隆の住んでいるマンションは私が下車する次の駅にある。今まで会わなかったほうが不思議なくらいだ。
まどかは隆の腰に掴まるようにしながら立っていて、隆は吊革につかまりながら片方の手でスマホをいじっている。それをまどかが咎めたのか、隆はスマホをポケットに突っ込んだ。
そして隆はまどかから視線を逸らす。逸らした視線は中を泳ぎ、あろうことか私に辿り着いた。
やばいと思ったが、遅かった。隆は、私に気付いてしまった。とっさに顔をそむけたが、隆の視線はまだ私を捕えている。ちょうどその時電車が駅に到着した。
私は逃げるように電車を降りて人影に身を隠して階段を上がった。改札を抜けると足早にアパートへ向かう。せっかくのほろ酔い気分もすっかり冷めてしまった。