一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
アパートのドアを開けると、游さんは既に帰宅していた。
「おかえり」
私に気付いた游さんはニコリとほほ笑んでくれる。
「ただいま。游さん、今日は帰ってこれたんですね」
「うん。久しぶりに由衣子ちゃんの顔が見たくなってね。頑張って仕事片づけた」
「またまた~」
ただのリップサービスだと思ってもそう言ってもらえると素直に嬉しい。
「ご飯は?」
「食べてきました。すみません」
「ううん、いいんだよ。シュークリーム買ってきたんだけど、もうこんな時間だし明日にでも食べて」
游さんは冷蔵庫を指さした。
「やった! せっかくだから今食べてもいいですか?」
「いいよ」
クスリと笑った游さんは「紅茶でも入れようか」と言って立ち上がる。
「ありがとうございます」
私は靴を脱いで部屋に上がると、手を洗って冷蔵庫を開けた。
「これ、今話題のやつだ」
「ああ、なんか有名らしいね。店の前に行列ができてたからきっとおいしいんだろうと思ってさ」
「わざわざありがとうございます。でも、あんまり無理しないでくださいね」
ここのシュークリームは厳選した高級素材を使っているというだけあってひとつ八百円もする高級品だ。
「無理、なんてしてないよ」
「でも、游さんアルバイトだし」
私の言葉に游さんは何か言いたげに口を開いた。その時丁度、私のスマホが大きな音を立てて鳴った。
「あ、ごめんなさい。マナーモードにするの忘れてました」
私は慌てて通話ボタンを押してしまった。ディスプレイに隆の名前が出ていたと気付いたけれど、時すでに遅し。