初恋物語


凛は、家で小学生の頃のアルバムを見ていた。
そこには、小さくて可愛らしい唯人の写真もあった。

「懐かしい...。あ、これって...」


凛はある写真を見つけた。それは、ピクニックの時の写真だ。
唯人と結依子さんの笑顔がなんだか似ていた。さすが親子だな。

結依子さんは、白のワンピースに麦わら帽子を被っていた。


ピンポーン
凛は唯人の家へいった。


「あれ、凛?今日はレッスンないんじゃないの?」
「あ、えっと...。暇だったから!来たの!」


今日、唯人の家に凛がいったのは凛自体もわかんなかった。
でも、会いたくなった、って感じで..。きっとさっきの写真のせいだ。


「俺さ、凛みたいな俳優になれるかな」


唯人が弱音を吐いてきた。
オーディションまで残り1ヶ月弱。
それまでに唯人が受かるように稽古をしている。

「だいじょぶだよ!昔みたいに唯人の強気があればね」

今更背中を引くことを言ってはだめだ、と思い、「大丈夫」
といってしまった。


「...あのさ、唯人」
「なに...?」

「...写真...なんだけどさ、」
「何の写真...?」
「これ」

そういって凛は唯人に、さっき見ていたピクニックの写真をみせた。


「...これってさ、あの時の...?」
「うん」
「へぇ...。写真、撮ってたっけな...」


唯人は寂しそうな声をした。


「あのさ、凛。この写真、預かってもいい?」
「えっ...。...いいけど」
「やだったらいいよ」
「全然全然っ...!平気。」
「じゃ、コピーしたら返すね。
今日はもう暗いから帰りな?」
「あ、ほんとだ...。ありがと」
「今日は送れない。ごめん」
「ううんっっ。いつもありがとう」

そういって凛は走って帰った。
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