初恋物語
母さんごめんな。
その夜、唯人は凛から預かった写真を眺めていた。
そこには、結依子と凛と唯人の姿があった。

その日は月が満月でキレイだった。月と写真が重なっていた。


「母さん...。ごめんな。俺、母さんの病気のことイマイチわかってなくて...。それなのに、母さんに任せっきりで」


唯人は写真に話しかけた。
まるで結依子に語りかけてるようで。


「父さんのことも、母さんのことも、一番わかってないのは俺だったかもしれないな...。母さんの大事な父さんを傷つけてごめん。
でもさ、俺まだ父さんのこと許してないよ。どうしても、心のどこかで許さない心があるみたいで...。」


唯人は今まで思ってたことを、家には誰もいないのに話し始めた。


「...母さん、俺、俳優になろうと思う。
とはいっても、まだなれるか分かんないけどね。凛はなれるっていってくれたけど。......凛にも母さんにも感謝しなくちゃいけないね。
でもさ、俺。小さい頃から二人の活動見てきたから、一番近くにいた俺は
有利だと思うんだ。だから、頑張るね」


唯人は結依子と父親の部屋にいった。
そこには、二人のベッドや、写真立て、母さんの好きな花、そして父親が好きだったタバコの箱がたくさんあった。
結依子はラベンダーの匂いが好きだったため、部屋がラベンダーの匂いで放たれてる。が、その匂いを、タバコで潰されている感じだ。

部屋を1回り見てみると、ある手紙を発見した。

「これは...?」

『お父さんへ
私ね、あなたといて嫌だなって思ったことは一度もないの。
なぜだろう。なんでだと思う?
それはね、私があなたを好きだからよ...。
ちょっぴり怖いあなただったけど、私が悪いからしょうがない。

病室に来なかったのは理由があったの...?
私、寂しかったです。唯人は来れないのは知ってたけど、やっぱり
家族に会えないのは不安でいっぱいに。


だから、私はあなたが大切で、とっても大好きです。
結婚してくれてありがとう。
結依子』
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