いかないで
「家族のかたは!?」
医者の顔が曇っている。
焦りと諦めが混ざった顔。
あぁ・・・。もう・・・。
「お父さんは大丈夫なの・・・?」
「明日までもつかどうか・・・最善を尽くしたのですが・・・」
目の前の医者は詐欺師かなにかかな?
だって嘘だもん。
お父さんが消えちゃうなんて。
「今日はお父さんのそばにいてあげてください・・・力不足で・・・」
崩れるように泣きわめく。
「いや!お父さんが・・・ひっく・・・うぅ・・・いやぁぁぁ・・・」
宗が何も言わずに抱きしめてくれる。
その体温でさえ信じられないほどに
現実味を帯びていない。
いやだ・・・そんなの・・・嘘だもん・・・。