君がすきだ。~ほろ苦バレンタイン~
「筧?、、、なに?」
長い廊下にこうたくんの少し高めの声が響く。
いつもより少し強ばったような真剣な顔。
私は、冬なのに汗ばんだ指の先だけがやけに冷たくて、ドキドキするのに、心地よくて、不思議な感覚だった。
ずっとこうしていたい。
こうたくんと…ふたりで向き合って、話していたい。
なに?って言いながら、こうたくんはきっと分かってる。
だから私と同じように耳を赤くして、不機嫌そうに横顔を向けているんでしょう?
でも、今日だけは、今日こそは、私から言わなきゃ、、、。
セーラー服の後ろでぎゅっと握りしめた小さな紙袋を、確かめるように握り直す。
だって今日は"特別"なんだよね。
2月14日。
小さい頃から一年に一度、チョコレートの魔法で、女の子がみんなちょっぴり強くなれる日だって思ってた。