夢想曲ートロイメライー

笑って頷くと、段々迫って来る影を指差す。

「利輔がね、競争に勝ったらお団子奢ってくれるんだって」

「あの真面目な利輔が勝負ごとか?」

晋作が目を丸くする。

他の塾生達も口々にありえない、などと言い合っている。

利輔の扱いって……。

そんな事考えていて、ふと後ろを振り返るとすぐ後ろを泳ぐ利輔の姿。

いつの間にか追いつかれていたみたいだ。

「とにかく、私は行くわよ!」

そう言ってまた泳ぎ始める。

「僕も行くぞ!」

そんな声と同時に横に並ぶ晋作。

それを見て他の塾生達も続く。

いつの間にか塾生全員を巻き込んでの水練競争になっていた。

侍の子も百姓の子も関係なく、全員で。
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