夢想曲ートロイメライー
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塾からの帰り道。
右手に風呂敷包みを持って、家へと急ぐ。
風呂敷の中には、硯と筆、それから先生から借りた本が入っている。
塾にはたくさんの本がある。
塾生が借りていったり、その中から生徒にあった本を先生が選んで教本にしたりもする。
今日も数冊借りてきて、家に戻ったら読むつもりだ。
先生もお気に入りの本みたいで、貸してくれた時の先生の表情もとても嬉しそうだった。
読むのが楽しみで、自然と急ぎ足になる。
途中の橋に差し掛かった時だ、後ろから呼び止められた。
「おい、お前」
振り向くと、腰に大小を差した青年が三人。
腕を組んで顔で立っている。
「何か?」
「お前、あの吉田松陰の塾のやつだろう」
「そうですけど……」
頷くと、青年達は鼻を鳴らしてせせら笑った。
「塾のやつら、ついに女とまで馴れ合うようになったのか」
「高杉達も足軽や農民の家のやつらと供に学んでいるそうじゃないか。恥ずかしくないのか」
松下村塾の皆を馬鹿にするような言葉に黙っていられなくて、思わず言い返す。
「学ぼうとする想いに身分も男女も関係ありません。そんなことを気にして、恥ずかしいのはあなた達のほうじゃないですか」
それがまずかった。