夢想曲ートロイメライー
その姿を見た三人は一気に表情を硬くした。
「げっ、高杉だ」
走り寄ってきた晋作と、隣には栄太郎。
二人は私のすぐ近くで立ち止まると、三人の青年を睨み付けた。
「君たち、一体何してるの?」
「一人に三人で寄ってたかって、武士として恥ずかしいとは思わないのか。僕が相手になるぞ」
いつもより数段低い声の二人。
拳を固めた晋作を見て、三人は慌てて逃げて行った。
私はふり払われて行き場を無くした腕を力なく降ろした。
「夕霧、大丈夫?」
「一体何があった」
「二人供、どうしよう……先生から借りた本が……」
俯いて事情を話す。
先生のお気に入りの本だったのに。
……どうしよう。
話し終えると、栄太郎が私の頭に手を置いた。
「大丈夫だよ、先生はそんなことじゃ怒らないから」
「そうかな……」
「その通りた。だが、しっかり事情は説明するべきだな。今ならまだ時間も早いし、行って来い」
「うん……分かったわ。二人供、助けてくれてありがとう」
気をつけて行け、と手を振る二人に別れを告げて、私は来た道を引き返す。