夢想曲ートロイメライー
「明倫館の?」
ここで九一はようやくこちらを向いてくれる。
「うん、確か先生の兵学の講義を受けていた人だよ。江戸に行っていると聞いていたけど、戻ってきたみたいだね。話というのは多分、江戸で手に入れた情報のことじゃないかな」
先生の所には各地から様々な情報が集まって来る。
明倫館の門下生から、友人から、塾の塾生から。
だから、ここ長州にいてもいち早く何が起きたのか知ることができる。
「また明日、先生にどんな話だったか聞かせてもらおう」
「うん、そうね」
笑顔で頷いて、そのまま立ち上がる。
外に目をやると、映ったのは鮮やかに染まった木々。
金色や紅、まるで友禅染を広げたみたい。
思わず見とれていると、冷たい風が吹いて木々を揺する。
風に攫われた葉はひらりひらり、風に舞って、地に落ちていった。