究極のお一人様〜ソロウェディングはお断り〜
なんで寄りにも寄ってこの曲。たまたま選んだ曲は、私が短大時代によく聞いていた切ないバラード。


歌詞が切なすぎてよくリピートしてた。イントロから懐かしさと歌詞を思い出して泣けてきそうになる。


無理やり入れたし、きっと修吾はこの曲を知らないだろう。少しすれば消してもっと盛り上がる曲を入れよう。


今日はお二人さまカラオケを楽しみにきたんだ。


そう思っていたのに左隣から聞こえてくる歌声にハッと視線を向けた。


話し声よりも少しだけ低くて、でも甘い歌声。本人は画面を見ながら淡々と歌っているだけなのに私は視線を外せない。


サビの部分の高音は更に胸の高鳴りを激しくする。この歌を修吾が歌っているだけで動揺したのに、抜群の歌唱力に圧倒された。



「・・・なに、今の。修吾、うますぎでしょ。上手いとは聞いてたけれどこんなに上手いなんて思いもみなかったよ」


「それはどうも。でも、俺も賢から聞いてますよ。カラオケになると声がガラッと変わるって。だから聴いてみたかったのに、断られるばかり。それなのにまさか今になって二人でカラオケなんて」


もちろん、歌ってもらいますよと機械を手にし、最初から決めていたかのように修吾は曲を入れた。


あんな歌声を聴いたあとに歌えるはずがない。それなのに、グイグイとマイクを押し付けられ、歌う羽目になってしまった。
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