ノーカウント


なんだか怖い。


そう思ってしまったのだ。


どうしたんだろう。彼は年下のくせに

焦らないし、こんなに感情を表に見せたのは初めてだ。


「ぷはっ。

も、分かったから。今日は断るわ。」


急用で行けなくなったことを伝えて

仕事が終わって彼の家に向かう。


すると家に入ると、また突然。

激しいキスが降ってくる。それが離れたのは酸欠直前だ。


すると新田くんも少し荒れた呼吸を戻しながら


「これでも分かんないんですか?」


そして私をじっと見つめる。


「なんのこと?」


私は戸惑いを隠せていないと思う。


私が知っている新田くんの顔は

私が大嫌いな笑顔を貼り付けたような笑み

あと、キスする前の色気づいた男の顔。


それくらいだったから。




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