忘れな草の願い
...は?何言ってんだこいつ?
俺がガン?そんなわけねえだろ?
「雅貴...この子がガン...?」
「はい、進行が早いためこのまま
だと持って、あと1年...」
「うそっ...うそよっ...!」
わあっ...と泣き崩れた母さんの
泣き声と淡々と話続ける医者の
冷たい声が不協和音のように
俺の耳に響く。
「...ざけんなよ...適当なこと
ばっかり言ってんじゃねえよ!!」
ものすごい勢いでつかみかかった
俺を看護師が取り押さえ、
それを少しの哀れみと悲しさを
含んだ冷たい目で見下ろしながら
医者はまた説明を続ける。
「すぐにでも入院して頂いて
抗がん剤での治療を...」
この言葉で俺はふと我に返った。
「入院はしねえ。」
「...え?」
「高校卒業するまで俺は
入院はしねえ。」