神様の暇潰し★
そう言って、目の前の''彼''は、

悪戯っ子のように、微笑んだ。

彼の手にする本が、
彼の声に呼応するように仄かに輝きだした。

あたたかく、優しい光の輝きは増していく。

...どこか、懐かしい光だった。

あれ?どうして、懐かしい、のか?

そういえば、彼の顔も、どこかで見たことが...。

光に包まれて、彼の顔は見えなくなっていた。

光が輪郭を、水をたっぷり含んだ絵筆でなぞったようにぼかしていく。

物語に吸い込まれるような感覚が襲う。

時は移り、あの頃へ。

''あの頃''私は、わたし、は...


『魔法...否、物語の鍵』


彼の声が頭に響く。

そう、物語の鍵。

忘れてはいけない鍵。 キーワード。

物語への、扉を開くモノ。

確か...


「「彼女は人間なのか」」


ギギギ...

まるで、年季が入った木製の扉を

開いたような音が、聞こえた気がした。

何故か、見えないはずの彼が微笑んだように感じた。


『××××、××』


物語の先に、注意がいっていった私には、

彼の声は、届かなかった。

─暗転─






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